阿波のジビエ

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ジビエ肉を広くみんなに届けたい

阿波ジビエの藤黒です。阿波ジビエでは、主にイノシシやシカなどの肉(いわゆるジビエ肉)の製造と販売を行っている会社です。2017年11月に開業しました。徳島では、ジビエの処理施設は7か所目です。元々は私の親が猟師さん(ハンター)をしていたところがきっかけになります。今でも、実際に私の親は山に入って猟師さんをしています。猟師さんとしては、有害鳥獣駆除及び狩猟の適正化を目的として、シカやイノシシなどをワナなどを駆使して駆除することになりますが、駆除を行う時に副産物的にいわゆるジビエ肉が取れるわけですね。

でも、今まではこの地域の山々で取ったジビエ肉は一般に流通することはなく地域の人の中だけで食べていたという状況があったんですね。この地域の人の中だけで食べていたジビエ肉を一般の皆さんに食べてもらおう!そう思い立ち阿波ジビエを立ち上げることにしました。でも昨年始めたばかりなので右も左も分からない状態ですけどね。

 

ジビエだからこそ活かせた技術

実は私には、もうひとつの顔があります。東みよし町だと、こっちの顔の方で私のことを知っている人が多いでしょうね。実は加茂で宝寿司という飲食店をしています。寿司屋という意味では東みよし町で唯一の寿司屋でしょうか。もちろん板前として料理に腕を振るっていますよ。魚の捌きも行いますし、下準備や加工、そしてレシピの考案もします。毎日、お客様においしい料理を提供するためには仕込みは欠かすことができません。特に魚の場合には、魚をおろしたり血抜きをしたりと陰で見えない準備をすることが必要になります。でも実はジビエの世界では、この下準備の部分の技術が一般的ではないことが見えてきました。

私は元々、料理人だからということもあったのかもしれません。ジビエの処理や加工をすることと自分の料理人としてのキャリアがクロスオーバーしたように感じましたね。また、スーパーに試食販売などを出したことがあるのですが、その時には「ジビエを使ったローストビーフ」というような料理レシピを提案して、お客様が使うことをイメージしやすいようなことを心がけたりしましたね。

ジビエが臭いを打ち破れ

猟師さんとして活躍されている人は猟師さんとしてはプロです。しかしながら、例えば食肉としての解体の仕方などの食肉加工や処理という分野、人の口に入るという意味では素人であるという現状があるんじゃないかなと私は思っていますね。例えばイノシシやシカは一般的に臭いというイメージがあると思います。猟師さんになぜ臭いのかを訪ねれば「今さっき取ってきたやつやから!」と言ったりする。実際に皆さんの中でも、ジビエ料理を少し知っている食通な人でさえ、そんなイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんね。でも実はですね、本当はジビエ肉というのは臭くないんですよ。なぜ臭いのかと言えば、ちゃんと血抜きが出来ていないからなんです。これは私の本職である魚も同じことです。魚だって血抜きがちゃんと出来ていないものは生臭い。あれとジビエは実は一緒なんです。つまり、処理の仕方、技術的な問題です。私自身は自分が飲食をやっていることもあるので、そういった「処理の仕方」という部分に早く気がつきジビエをやるには処理が最も重要でないだろうかと考え最初に一番力を入れました。

こういったことが理由からジビエ肉というのは一般的の消費者まで届けにくく地域の中で消費してしまうことが多かった。そこで今、徳島県などが主体となってイノシシの解体のやり方などジビエ肉の捌き方の講習会を開くなど、猟師さんに食肉としての捌き方などを教えています。こういったことの活動を通じて「悪いものを出さない」という風潮がジビエにも広がることが今起こっているのです。

 

ロースがロースにならない

また、猟師さんは食肉の専門家ではないので、モモだったらモモという部位でしか見てないということもあると思います。もっと小分けにすることが出来るのに、そのままモモという部位切ってしまう。また、例えば背中の部分をロースとして部位として捉えているとバラも入りながらのロースを切ってしまったり、あばら骨の真ん中くらいまでロースはあるのに上の方の細いロースを取ってしまったりしてロースを無駄にしてしまうということがあります。最初の頃に、私は猟師さんからイノシシのロースを見せてもらったことがあったのですが、豚のロースとかは油が乗って赤い身があってっていうイメージじゃないですか。

私は、そういうロースが出てくるものだと思っていたんです。ところが現物を見ると、どこがロースなん!?って思うものが出てきたんです。その時に私は、自身の料理人としての経験もあり、ジビエは処理と加工が重要だと考えて、この仕事に取り組もうと考えるようになりました。

ジビエのこれからを作って行きたい

ジビエ肉にもシーズンがありまして、シカだと、秋口からでもいけますが一番の旬は春。イノシシは冬ですね。このシーズンを逃すとジビエは出荷できなさそうに思われますが、当社では大丈夫です。マイナス60℃になる冷凍保管室を作りましたので、霜もつかない環境でジビエを365日保管することが出来ます。つまり、安定した供給も可能なのです。この様にジビエ肉を一般の皆さんに届ける環境を飲食に携わってきた人間として整えてきました。ジビエは他店との差別化に繋がるので、興味はあった。だけど、品質や量が安定的でなく使いにくいと感じていた飲食店さんには当社のジビエは向いているのではないかと思います。また、安定供給の体制があるという意味では製造委託が可能な食品工場さんとジビエを使った商品などの協業もしていきたいですね。また、これは特殊な使い方なのですが、バラ肉はスジが固いので、ペットフードから注目もされているようですね。そういったペットフード業界さんともお話が出来るかなと思っています。

ものづくりを通じて

私がジビエを取り組もうと思ったきっかけは知人から「ジビエを仕入れたいけど、なかなか猟師さんがいい物を出してくれないんだよね」という意見からでした。実際に自分もジビエを取り組むことで色々な問題点が見えてきて、ここまで少しずつクリアしてきました。そういう活動を通じて、将来的には、ジビエを捌ける人などの雇用、狩猟する人の高齢化もあり狩猟仲間を作っていければと考えています。他方では、東みよし町は徳島県西部で今一番栄えている町ではないでしょうか。しかし、私はこういう仕事を通じて感じますが、年々過疎化が進んでいますね。しかし、過疎化が進んでいるのであれば、よその町に負けないようにこっちの町に引き込むような流れを作っていけることが出来たらいいですね。私は、ジビエを通じて少しでも、その流れのお手伝い出来たら嬉しいなあと思っています。