合同会社法市の干し芋

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200年前から伝わる自然な製法

法市の干し芋の山川です。法市の干し芋では、東みよし町の法市集落で200年前から育てていると言われるサツマイモを生産し、干し芋として製造と販売を行っている会社です。一番の特徴は、添加物などを加えない法市集落が大切にしてきた独自の環境の製法を守った干し芋を販売していることです。合言葉は「自然のまんま、そのまんま!」農薬や化学肥料を使わない、自然農法を主体にした干し芋作りにチャンレジし続けています。

 

世界が認めた法市集落

法市集落は、たぶん東みよし町民でも知らない人がいるかもしれませんね。東みよし町には南北を分けるように吉野川が流れています。この北側、讃岐山脈の標高200~500mに法市集落はあります。この法市集落は山間部でありながら古くからの水源地で、水の恵で集落が形成された地域です。法市集落を含めた徳島県西部における山間部集落では古くから、段々畑のような水平面を作り農業を行わず、傾斜地のまま農耕するという傾斜地農耕の文化が根付いていました。

場所によっては傾斜40度にもなる急傾斜地を上手に使いながら農業を行う姿には、日本の原風景ともいえる山村景観や農耕にまつわる伝統行事などが今も息づいています。そんな法市集落は、2018年3月に「にし阿波の傾斜地農耕システム」として世界農業遺産に認定された地域の一つとなりました。

 

6次化へのチャレンジ

今年で3年目になりますが、いわゆる農業の6次化を実現するべく日々チャレンジをしています。農業の6次化と言われても皆さんは、あまりピンとこないかもしれませんね。今、地方の田舎で農業だけをやっていても食べていける人は一握りになってきました。

そこで、農産物の生産物の元々持っている価値をさらに高めていこうと考えて、2次産業(工業・製造業)や3次産業(販売業・サービス業)を取り込んでいこうという流れが起きています。1次産業の1×2次産業の2×3次産業の3のかけ算の6で6次化という表現をしているのです。

法市の干し芋は、全国どこにでもあると思われている「さつま芋」や「干し芋」という素材を使って法市らしい価値を皆さんに提供しています。

 

限界集落と向き合う

そんな、世界農業遺産に認定された法市集落ですが、現状はとても大変です。現在、法市集落には住居は10軒ほどしかありません。ニュースなどでよく耳にする、いわゆる「限界集落」という言葉がありますが、まさに法市集落は限界集落としての現実があるのです。実は私は、元々大手スーパーマーケットチェーンで27年間サラリーマンをしていました。担当は大型店舗のマネジメントでした。全く何もない所からゼロベースでショッピングモールの立ち上げを行ったり、収益悪化となっている大型店舗の前線に立ち復活させたり。

現場主義の人間だった私は、ただ何も考えずに頑張れば売れていくという考え方を否定しお試し販売などのテストマーケティングを実施するなど、販売方法もマネジメントすることが大切だと痛感していました。しかし結局はサラリーマンですから、自分がゼロからイチを生み出すやり方への限界も感じており、新しい活路を見出していきたいという気持ちを持ち始めていた時期でもありました。そんな中で、お試し販売企画の一環でイベントとして地域の物産展などの開催をしていましたが、そんな中で出会ったのが弊社代表の上田でした。最初は「干し芋を売りたい」という相談だったのですが、実際に足を運ぶと限界集落である法市集落の現状を知ることとなり法市集落と向き合うことになります。法市集落の現実はとても大変です。しかしながら、その中で生活を営んでいる人と触れ合う中で、なんとか法市集落を再生したいという想いが芽生え始めます。同時に、この法市集落でゼロからイチを生み出すことにチャレンジできるのではないだろうかという想いが強くなり、この法市の干し芋をスタートさせることになったのです。

 

法市集落自体を商品に

しかし想いだけでは商売は始められません。干し芋と言っても、干し芋としてだけで見れば全国のどこにでもある何の変哲もない干し芋です。そこで、まずは干し芋というものから離れます。実際に農産品単独として素材の金時芋を売ろうと考えていくと私が現在持っている10倍以上の耕作面積が必要になってきます。法市集落という山間部集落において、それだけの耕作面積を確保することは現実的ではありません。つまり現在の耕作面積という制約条件の中で付加価値をつけていくという必要が生じた瞬間でもありました。そこで、前職での経験を活かし「ものづくりでなく、ことづくり」を重視した製品開発プロセスをスタートさせました。簡単に言ってしまえば「法市集落自体を商品にしてしまおう」という素材としての食品を一度否定してみた商品開発です。素材としての食品を製品として捉えずに、集落自体を製品とした捉えるために、一見関係のない人からの意見も積極的に取り入れて考えたりしていました。

例えば、干し芋はダイエットにも有効的でモデル事務所とコラボレーションしてダイエット的観点でどうだろうか、と言った具合です(笑)そして、そういう動きを続けているうちに、一つ切り口として雑貨店に置いてもらえるような「パッケージを開発しよう」という考えに行きつきました。実際には他がまとまった量の契約をして商売を成り立たせようとしている中で、他が手をつけないようなスキマの販売店に力を入れたりしています。こう言った捉え方、視点を変えて新しい価値を生むということは前職で得た貴重な気づきだと思っています。

 

ものづくりを通じて

私には夢があります。それは法市集落を「農村テーマパーク」として未来の子どもたちに遊びに来てもらえるようにすることです。今、法市集落では1番下の年齢は70歳です。集落再生や集落維持をするためには、あらゆる方法を使わねばならず迷っている時間的な余裕はないことは分かっています。でも、まずは法市集落にいる人たち、私に関わってくれる人たちが楽しく生きていけたら、生きていけるにはどうしたらいいだろうかということを意識した上で、最終的には誰かに来てもらえるような環境になっていければ良いと考えています。